※フェリクスとウィレム:1 ウィレム:うーん、一人前の騎士になるためには、  どうしたら良いんだろう……。 フェリクス:もしもし、そこの騎士の方。 何か、お困りごとでしょうか? ウィレム:え? あ……はい。  困りごとと言えば、 困りごとなんですけれども――。 フェリクス:それでしたら、このネコネコ騎士が  微力ではありますが、 力をお貸ししましょう。 ウィレム:えーっと、ありがとうございます。  ……ですが、貴方は一体誰なんですか? 面識はないと思うんですけども。 フェリクス:すみません、申し遅れました。  私、謎のネコネコ騎士という者です。 ウィレム:謎のネコネコ騎士様――って、本当ですか?  すごい! 騎士の中の騎士と謳われるネコネコ騎士様に  こんなところで会えるなんて!  うわぁ、僕って運がいいなぁ! すみません、サイン貰ってもいいですか? フェリクス:ええ、構いませんよ。 サラサラサラ……はい、どうぞ。 ウィレム:ありがとうございます! あ、あの……それでネコネコ騎士様は、  僕の困りごとを聞いてくれんですよね? フェリクス:はい、もちろんです。 困りごととはなんでしょうか? ウィレム:実は、ですね。  僕、どうしても一人前の騎士に なりたいんです。  でも、いつも失敗ばかりで、 姫様のお役に全然立てなくて――。 フェリクス:なるほど。 それは、なかなかに深刻な悩みですね。 ウィレム:ネコネコ騎士様、お願いします!  僕に、役に立つ立派な騎士になれる方法を 教えてください! フェリクス:心配はご無用です。  このネコネコ騎士にかかれば、 問題はたちどころに解決です。 ウィレム:そうなんですか? やっぱり、ネコネコ騎士様はすごいなぁ。  ……それで、どうすれば僕は、 立派な騎士になれるのでしょうか? フェリクス:簡単なことですよ。  貴方も、ネコネコ騎士試験を受けて、 それに合格すればいいのです。 ウィレム:ネコネコ騎士試験……?  確かに、ネコネコ騎士は 騎士の中の騎士って言いますけど、  僕には受かる自信がないです。 フェリクス:大丈夫ですよ。 私がついていると言ったじゃないですか。  貴方にいいものを差し上げます。  これを使えば、ネコネコ騎士試験も 一発で合格ですよ。 ウィレム:こ、これは――。 ネコネコ騎士試験予想問題集! フェリクス:次回の試験日は来週です。  それまで、しっかり勉強して下さいね。  それでは。 またお会いできればいいですね。 ウィレム:謎のネコネコ騎士様……。 あ、ありがとうございます! ※フェリクスとウィレム:2 ウィレム:あ、謎のネコネコ騎士様! フェリクス:おや、貴方はいつぞやの 半人前騎士さんですね。 ウィレム:半人前って酷いですよ。  僕はもう、立派な騎士に なれたんですから……。 フェリクス:ということは、もしや? ウィレム:はい! ネコネコ騎士試験に見事合格しました! フェリクス:それは素晴らしい。 おめでとうございます。 ウィレム:いや、すごいのは、 ネコネコ騎士様からいただいた  あの問題集ですよ。  だって、本番の試験で出た問題、 全部あれに載ってたんですから。 フェリクス:それは良かったです。  私も、問題集と同じ問題を試験に出した 甲斐があったってものです。 ウィレム:……え? 問題集と同じ問題を試験に出した……って、  どういうことですか? フェリクス:言葉通りの意味ですよ。  あの試験の問題をつくったのは、 何を隠そうこの私なのです。 ウィレム:そうだったんですか! あれ、でもおかしいな。  あの試験問題には確か、 『問題作成 ネコネコ騎士会名誉会長』 って……。  え、もしかして――。 フェリクス:はい、実は私、ネコネコ騎士会の  名誉会長を務めさせて頂いております。 ウィレム:す、すごい! まさか貴方が名誉会長だったなんて……。 フェリクス:そんなに驚いて貰っても困りますよ。  そう言う貴方だって、副会長なのですから。 ウィレム:僕が副会長……?  この前ネコネコ騎士になったばかりの僕が、 なんでそんな重要な職に!? フェリクス:それは簡単なことです。  なぜなら、この世にネコネコ騎士は 貴方と私しかいないのですから。  実は、貴方がネコネコ騎士試験に合格した、 二人目の人間なのです。 ウィレム:そ、そうだったんですか!  僕がネコネコ騎士会名誉副会長……かぁ。  えへへ、半人前から一人前を通り越して、 百人前くらいになった気分です。 フェリクス:それでは、副会長。ネコネコ騎士会の  存続と発展のためにも、今日から二人で 力を合わせて頑張りましょう。 ウィレム:はい、会長! 僕も精一杯頑張ります! ※コルネリウスとウィレム:1 コルネリウス:ちょっとそこのお前。 ウィレム:えーっと……僕のことですか? コルネリウス:ああ、その通りだ。 ウィレム:僕の知っている方……ではないですよね。 何か御用でしょうか? コルネリウス:……お前、妹はいるか? ウィレム:なんだか唐突な質問ですね。  いえ、兄弟は一人もいないですけど、 それが何か……。 コルネリウス:ふぅむ、やはりな。  ひと目見たときから、 そうではないかと思っていた。 ウィレム:あの……それは一体、 どういうことでしょうか?  全然、話が見えてこないのですが……。 コルネリウス:お前の身体つきが軟弱すぎるということだ。  そんなことでは『お兄ちゃん』が 務まるはずもないからな。 ウィレム:……なるほど。 すごい推理ですね。 騎士というからにはやはり、  あなたくらいの洞察力は 必要なんでしょうか……。 コルネリウス:はっはっはっは! まあ、お前も精進することだな。 ※コルネリウスとウィレム:2 ウィレム:あ、こんにちは。 またお会いしましたね。 コルネリウス:おお、お前はいつぞやの軟弱騎士。  そういえばまだ、 名前を聞いていなかったな。 ウィレム:そうですね。 僕はウィレムといいます。 貴方は? コルネリウス:俺は世界のお兄ちゃんコルネリウスだが……  ふむ、ウィレムか。 いまいちぱっとしない名前だな。 ウィレム:うう、そうですか……?  自分ではそれなりに 気に入ってるんですけれど。 コルネリウス:まあ、そこまで悪いとは言っていない。  ただ、ぱっとしないというだけだ。  しかし、どう差し引いて考えても、 お兄ちゃん的と言い難いのは確かだな。 ウィレム:お兄ちゃん的とは言い難い、ですか……。 コルネリウス:うむ。 つまりは、俺のような頼れる騎士には  なれそうもないということだ。 ウィレム:そ、そんなぁ。 それじゃあ困っちゃいますよ……。  僕はどうしても、強くて頼れる騎士に ならなければいけないんです。 コルネリウス:しかし、そうは言ってもなぁ……。  いや、ひとついいことを思いついたぞ。 ウィレム:な、なんですか? 教えて下さい! コルネリウス:お前、妹になれ。 ウィレム:い、妹――? コルネリウス:ああ、その通り。 お兄ちゃんは無理な相談だ。  だがな、お前のそのか弱さであれば、 それはそれは素晴らしき妹になれるぞ。 ウィレム:あの、妹でも立派な騎士に なれるんでしょうか……? コルネリウス:前例はないがまあ、無理でもないだろう。  よし、そうだな。 これも何かの縁だ。  ここは俺が一肌脱いで、お前が立派な妹に なるための特訓を施してやろう。 ウィレム:コルネリウスさん――。  わかりました、よろしくお願いします! ※コルネリウスとウィレム:3 ウィレム:――お兄ちゃん。 大好き!  あの……どうでしょうか? コルネリウス:ふぅむ……。 よし、合格だ! ウィレム:わーい! やったー! コルネリウス:今日まで、苦しい修行をよく耐えたな。  お前はもう、どこに出しても恥ずかしくない 立派な妹だ。 ウィレム:ありがとうございます! 僕もこれでやっと一人前の騎士として――。 コルネリウス:いやいやいやいや、待て。 ウィレム:はい? どうしたんですか? コルネリウス:少し勘違いしているようだが、  一人前の妹になれたからといって、一人前の 騎士になれるというわけではないぞ。 ウィレム:え、そうなんですか? ちょっと話が違うような――。 コルネリウス:むしろ騎士としては後退したかもしれない。 ウィレム:そ、そんな……。 コルネリウス:まあ、些細な問題に過ぎないがな。 それよりも、だ。  立派な妹となったお前にだな、俺の妹を 紹介してやりたいと思うのだが、どうだ?  妹同士、話も合うことだろう。 友達になってやってくれないか? ウィレム:……いえ、遠慮しておきます。  それじゃ、僕は用事があるのでこれで――。 コルネリウス:いやいやそうと言わずにだな……  っておい、どこへ行くんだ? ……おーい!  えらい落胆した様子で どこかに行ってしまいやがった。  一体何がどうなってるんだ。 最近の妹の考えることはよくわからんな。