※アストラッドとジークムント アストラッド:お爺さん、あのジークムントなんだよな。  稽古つけてくれよ! ジークムント:なんじゃ、藪から棒に……。 マ、ええぞ。 アストラッド:おーっし! よろしくお願いします! アストラッド:うりゃうりゃーっ! ジークムント:ちょいっ、はい、ほれっ。 アストラッド:なっ、なんで当たらないんだ!? ジークムント:ほれ、隙。 アストラッド:いってえ〜ッ! ジークムント:ほっほっ、まだまだじゃのー。 アストラッド:ハァッ、ハァッ……。 どうして当たらないんだ!?  あんなに連撃を仕掛けたのに! ジークムント:無駄な動きが多すぎるんじゃよ。  例えば、相手がこう、剣を振り上げる。  振り上げた時の腕の動き、重心の置き方、  手の構えで、相手がどこに振り下ろそうと するかがわかる。  あとは、一寸だけ体をずらせばええ。  演劇役者のように、体を大きく 動かしていたら、疲れるだけじゃろ。 アストラッド:そっかー、さすがだなー。  一瞬で相手の動きを見切るなんて。 オレにもできるかな? ジークムント:おっと、他人の真似ばかりしても、 頂点は極められんぞ。  自分だけの方法で、 自分だけの頂点を目指すことじゃ。  あせらず、ゆっくりとな。 アストラッド:わかりました、ジークムント様! もう一回、稽古つけてください! ジークムント:おいおい……こっちの体力も、 少しは考えてくれ! ※ザカートとジークムント ジークムント:フーッ、ああ疲れた。 この辺でやめにしよう。 ザカート:本日は、いろいろと勉強になりました。 ジークムント:ジジイにやれることなぞ、 技術の伝承くらいのものだからなあ。  ところでおぬし、イスティグファールから 参られたのかな? ザカート:母がイスティグファールの者であるだけで、  私自身はこの国の生まれです。 ジークムント:大変暑い国と聞いておる。 砂漠に人間が住めるのか? ザカート:日陰に入れば涼しいものです。  ジークムント様くらいのお年の方も 大勢住んでおりますよ。 ジークムント:フーム、イスティグファールで 住むのもいいかのー。 ザカート:これまたどうして。 ジークムント:この国には、長いこと住んでおった。  つらいことや悲しいこと、 いろんなことがありすぎた。  だから、無縁の土地で、 ひっそり過ごしたいと思うてな。 ザカート:ですが、楽しいことも たくさんあったでしょう? ジークムント:『楽しい』と『つらい』は表裏一体、  わしの楽しかった思い出は、すべて、 つらいことに結びついてしまう。  長く生きすぎたかもしれん。 ザカート:……今度、イスティグファールの首都  マナート特産のお茶をお淹れしましょう。  ジークムント様は茶を嗜まれる、 と耳にしました。お茶の味を見てから  考えてみてもいいのではないでしょうか。 ジークムント:ウム……それは重要じゃな。  茶のまずいところで死にたくはないわい。 ※ヌシャトーとジークムント ヌシャトー:もう一度。 ジークムント:おいおい、もうやめにせんか! 体力がいくらあっても足りん! ヌシャトー:勝利するまで訓練。 ジークムント:さすが、体力にかけては右に出る者のない ポランニー人じゃのー。  牛頭人ミノタウロスの末裔という話も うなずけようぞ。 ヌシャトー:我、体力ない。 母、体力ある。 手で、鎖を割った。 ジークムント:鎖を割った……? 引きちぎったのか!? なんという女じゃ! ヌシャトー:『勝利するまで戦闘』 母の口癖。 訓練、もう一度。 ジークムント:もう勘弁してくれ〜! ※ジークムントとユーグ ジークムント:ほっほっ、また一本捕ったぞ。 ユーグ:年寄りのくせに、じっちゃん強えーなー!  ……あっ。 ジークムント:『じっちゃん』? ユーグ:あーいや、ははは。 気にすんなよ。 ジークムント:ククク、『じっちゃん』か。 ウププププ……。 ユーグ:わ、笑うなよ! 呼び間違えたんだよ! 悪いか! ジークムント:アレじゃな。幼な子が、 母親以外のご婦人を『お母さん』  と呼んでしまうアレじゃな。ウププ……。 ユーグ:笑うなよー! ※ジークムントとギィ ジークムント:ヌオッ! また一本取られたわい! 強いの〜。  『盗賊100人を斬り殺した』だとか、 おぬしの噂は聞いておったが、  嘘ではないようじゃな。  ……その腰の剣、少し見せてはくれんかの。 ギィ:どうぞ。 ジークムント:ほう、これは……! 美しい刃紋じゃ。  ターブルロンドの剣では、 このような刃紋を作り出せぬ。  だが、この剣自体は、 紛れもなくターブルロンド様式。 ギィ:如何にも。  ハチマンの曲刀『ムラサマ』を 刀匠パージエが打ち直せし、  その名も『エゼルリング』。 ジークムント:『エゼルリング』……よい名じゃ。 この美しい剣にふさわしい。  なんという切れ味じゃ! 触れただけで皮一枚斬れおった。  髭でも剃れそうじゃの。  おっと、興奮してしまった。ありがとう。 そうか、元はハチマンの刀か。  おぬしの太刀筋も、 ハチマン仕込みじゃろう? ギィ:…………。 ジークムント:隠さんでもよい。 似た太刀を相手にしたことがあるからの。  そう……黒貴族の使う太刀筋 そっくりじゃった。 ギィ:ほう……。 ジークムント:奴は、古今東西あらゆる剣技を 身につけておる。  おまえさんなら、あるいは……。 ギィ:さあ、どうでしょうな。 では、失礼致す。 ジークムント:謎多き騎士よ……。