※グイードとレミー レミー:グイード殿。 僕が言えた義理じゃあないが、  鍛錬は真面目にしておきたまえよ。 仮にも主君からの、 命令だろう? グイード:大丈夫大丈夫、訓練なんざ、 若い頃に散々したからな。  今はその貯金を減らさないように、 こうして酒で養生しているわけだ……。  ヒック。 カラス:……ガァ……。 レミー:ククク……。  なるほど、本当の実力を、 僕には隠しておきたいというわけか。  確かに、何時敵に回るかわからない、 胡散臭い騎士だからねえ、僕は。 グイード:……へえ、なかなか切れるなお前。  俺の考えを一発で見抜くたあ……。 まるで闇の連中の魔法だな。 レミー:そんな大それたもんじゃあない。  あなたが女性によくかける、 魔法じみた魅惑に比べれば。 グイード:趣味が悪いぜ、見てるのか。 レミー:必要があれば。  ああ、寝る前に呑みすぎるのは、 やめたほうがいいな。 寿命が縮むぞ。 グイード:ふん、むしろ縮んでしまえと思うがな。  だが、今後は控えよう。 お前に寝首をかかれちゃかなわん。  だがお前も、 そのカラスに頼りすぎるなよ。 視線をカラスに送りすぎるぜ。 レミー:む……。 グイード:お前のやり口は大したものだが、  カラスとお前、どっちが企んでるのかな? ふふふ……。 レミー(怒り顔):ククク……侮っていたな。 恐ろしい騎士だよ、あんたは……。 ※レミーとユーグ:1 ユーグ:……おいあんた。 なに、ぼーっと空なんか見てんだよ。  俺様になんか教えてくれるんじゃねえのか。  執政官の奴から聞いたぜ。 あんた、すごい実力派なんだろ?  だったら、ちょっと俺に教えて……。 レミー:ククク……。 それが人にモノを頼む態度かい? ユーグ:な、なんだと!? レミー:僕は君のことなんて、 知ったことじゃあないし、  そもそも鍛錬に興味もない。 フィーリア様に頼まれたから、  こうしていやいや、 君に付き合っているだけさ。  そんな僕に、何かを頼みたいなら、 それ相応の態度って奴が、  必要だと思わないかい? ユーグ:騎士のクセに、なんて奴だ! わかったよ、もう頼まないぜ! レミー:おいおい、そう癇癪を起こすなよ。  それともなにかい? どういう態度が必要か、わからないのかい?  おかしいね……。 こういう礼儀作法は、見習い騎士時代に、  真っ先に叩き込まれるはずだけど。 ユーグ:ぎっくう!  し、知らないなんて、 あるわけねーだろ!? ただ、俺様のプライドがなあ! レミー:……ククク、面白い奴。  なるほど、フィーリア様も、 重宝なさるはずだ。  それで? 自分を磨きたいのか? 磨きたくないのか? ユーグ:そ、そんなの……。  そんなの、決まってるだろ。  強くなって、賢くなって、 すげえ偉い騎士になりたい。  他の騎士の頭を蹴ってやれるくらい、 すげえ騎士になりたい……。  だから地味な特訓だって、ちゃんと……。 レミー:ククク……。面白いね君は。 いいだろう、僕もふざけすぎた。  ちゃんとセンセイをやってあげるよ。 ユーグ:ほ、ほんとうか! レミー:だがお前の話の持っていき方は、 あんまりにも下手すぎる。  聞いていて腹が立ってくるくらいだ。 だからまず、そこを鍛えるぞ。  騎士なら礼儀作法と交渉術は、 ちゃんと身に着けておけ。 ユーグ:お、おうよ! ※レミーとユーグ:2 ユーグ:おいレミー! レミー:ククク……。 どうした、血相を変えて。 ユーグ:どうしたもこうしたもあるか!  おまえに教わった話術とやらを、 人に試してみたらなあ!  相手の機嫌が、死ぬほど悪くなったぞ!  てめえ、どういう話術を 俺様に教え込んだんだ!? レミー:ククク……クハハハ! ユーグ:爆笑すんな! レミー:それはそれとして、ユーグ。  今日はちょっとした、 槍捌きのコツを教えてやろう。 ユーグ:や、槍捌きだって!? そ、そいつぁ……。 レミー:目の色が変わったな。  なに、どうもお前の槍捌きは、 あまり上手じゃないようだからな。  ちゃんとした師匠に習えば、 ああは無様にはならないはずだが……。  誰に教わったんだ? ん? ユーグ:そ、そりゃあ……その。  お、俺様には師匠なんて、 必要なかったぜ! 我流だよ、我流! レミー:ククク……。嘘じゃあなさそうだな。  嘘が大好物な、僕のカラスが、 沈黙しているようじゃあ。  そういう無意味な正直さ、 嫌いじゃあないがね。 ユーグ:で、教えてくれるのか!? どうなんだよ! レミー:ああ、とっておきの技を、教えてやる。  さあ、馬を曳いてこい! ※レミーとユーグ:3 ユーグ:おいレミー! レミー:ククク……。 今度は誰に怒られた? ユーグ:そんなことは、どうでもいいだろ!  おまえはなんなんだ、 でたらめばっかり教えやがって! レミー:ちゃんとした騎士様ならともかく、  お前にはそれくらいでちょうどいい。 お前、平民だろ?  騎士の話術や武術を覚えて、 どうしようっていうんだ。 ユーグ:……あ、ぐ……。 なんで……。 レミー:言っただろう? 僕のカラスは、嘘が大好物でね。  まあ、そんなのに頼らなくても、  君の立ち居振る舞いをちょっと観察すれば、 すぐにわかることだけど……。 ユーグ:た、たのむ! 他の騎士には、 バラさないでくれ! レミー:……そいつぁ、事情しだいだね。  僕は黒貴族みたいに、 他人の人生を楽しむ趣味はないけど……。  大罪とわかって騎士に化けるってのは、 相当の覚悟がいるはずだ。  その覚悟には、興味があるからね。 レミー:……大体、事情はわかった。 いいだろう、誰にも言わないよ。 ユーグ:あ、ありがてえ……。 レミー:だがそんな調子じゃ、いつか誰かにばれる。  その相手が、僕のように、 気まぐれだとは限らない。  たいていの騎士は、騎士階級に、 平民が踏み込んでくるなんて、  許せないだろうしね。 ユーグ:……そ、そうか。  だが俺も、できる限り、 騎士らしくしているつもりなんだが……。  やっぱり教養が足りねえかな……。 レミー:そんなのは重要じゃない。  馬鹿で粗野な騎士だって、 いくらでもいるさ。  そもそも騎士と平民の違いは……。 ユーグ:違いは? レミー:……出来れば教えてやりたいが、  こればかりは、僕にはどうにも出来ないな。  騎士と平民の差は、 名誉を持って生きられるか……。   ……その一点なんだよ。 ユーグ:……名誉。 む、むずかしいな。  色々意味があるんだろう?  で、でもあんただって、 ちゃんとした騎士なんだから、  名誉のことは良くわかって……。 レミー:……僕はダメだ。 卑怯者の二つ名は、伊達じゃあない。  世襲で騎士の位を継がなければ、 そもそも僕だって、  騎士でいられるはずも……。 ユーグ:……そ、そんなことはないぜ!  あんたはすごく強いし、頭も切れる! 主君の役にも立ってる!  それで、十分に騎士だろう! レミー:……ふ、これだから、 名誉の価値を知らない奴は。  ……だがユーグ。 もしお前が本当に騎士に化け続け、  そして騎士になりたいならば。  ……僕の反対のことをしろ。 そうすれば、名誉を失わずに済む。 ユーグ:……あんたと、反対のことを? レミー:そうだ。がんばれよ  ……そしてもう、 僕にあまりかかわるんじゃない。 ユーグ:……あっ、レミー!? レミー、まてよ! ※ヴァンとレミー 王子イベント ヴァン:口だけかと思っていたが、 なかなかやるではないか。 レミー:いやいや、僕には向いてないな。  貴族を相手にしてる方がよっぽど気楽だ。  ああ、そうだ。 君、フィーリウス王子を探してるんだって? ヴァン:行方を知っているのか!? レミー:彼のことを捜すのはやめた方がいい。 あれはおそろしい男だよ。 ヴァン:ナニ!? レミー:じゃあね。 ヴァン:待て、どこへ行く! 待てーッ! レミー(焦り顔):おいおい相棒。 彼、まだ追いかけてくるよ。  まるで走り出した牛だね。 ヴァン:待てー! パミラ:あら、ヴァン殿、また走り込みかしら。 クラリッサ:誰か追われてたみたいだけど……。 パミラ:誰かが盗み食いでもして、 追いかけられてるんじゃない? レミー(困り顔):はあ……はあ……。  なんで僕が追われなきゃならないんだ! ヴァン:待てー! レミー:はあ、はあ……。 な、なんなんだよ! ヴァン:王子のことを教えろ! レミー:教えただろう! 彼はおそろしい男なんだ。 ヴァン:どのように! レミー:はぁ……はぁ……。 少しくらい休ませてよ。  まったく、彼は仮にも、 騎士王の直系男児なんだぜ。  お人形扱いだった妹にさえ、 アレだけの底力があったんだ。  彼なら言わずもがな……じゃないかな? ヴァン:キサマ、王子のなにを知っている! レミー:言ったって信じないだろうから、 言わないよ。  君たちが彼のことを、 よく見ていなかっただけさ。 ヴァン:居場所を知っているのか!? レミー:さすがに知らないよ。 知りたくもない。  巻き込まれるのがオチだからね。 ヴァン:キサマ! 教えろーッ! レミー:おっと。 僕が教えられるのはここまでさ。  あとは自分の、目と耳で確かめるんだね。 真実はひとつじゃない……。 ヴァン:…………。