※ヴァルターとグイード:1 グイード:……ああ疲れた。 おまえはよく体力がもつな。  不摂生度合いは変わらんと思うが。 ヴァルター:日々の鍛え方が違うし、 残念ながらトシも違うさ。 グイード:抜かせ、お前ももうすぐ30の大台だ。  そうなりゃ、オレの気持ちもわかる。 だいたいオレだって、  今のお前の年のころは、 夜通し貴婦人のお相手をだなあ。 ヴァルター:あー……またそっちの話か。 好きだなぁ、ほんとに。 グイード:なんだ、この程度の話も、 きつくなってきたのか。  お前、年々潔癖症になるなあ。  滾ってる若い連中の話に、 混ざれんのじゃないか。 ヴァルター:今の若い奴らは、昔の俺たちほど、 ご婦人に執着が無いようだぞ。 グイード:それは本当か? 奴らは何が楽しくて生きてるんだ? ヴァルター:国が乱れてるからなあ……。 余裕も無いのかもしれん。 グイード:ああ、それなら わからんでもないな……。 ※ヴァルターとグイード:2 グイード:ヴァルター。 今日はオレのおごりだ。呑め。 ヴァルター:おい、どうした急に?  そんな顔で言われたら、 じゃあ奢られるぜ、なんて言えんだろう。 グイード:どうも最近、いやな予感がする。  シジェルからの迎えが、 いよいよ近いのかもしれん。 ヴァルター:お、おい……。 グイード:まて、最後まで言わせろ。  俺は死ぬ前に、お前に一言だけ、 詫びをしておきたいのだ。  今日の驕りは、詫びの酒だ。  ……ミザリィのことは、すまなかった。  あの時オレに、もうすこし覇気があれば、 あんなことには……。 ヴァルター:……。  いや、あの時あなたの忠告を、 ちゃんと受けなかった私が悪いんだ。  あなたは何も、悪くなかった。 グイード:お前はそう言うがな。 オレは思うんだよ。  もっと強く言うべきだった。 殴ってでもわからせるべきだった。  いや、いっそこの手で、 あの女を殺しておけば……。 ヴァルター(笑顔):たしかにあなたがあの時そうしていたら、  私は救われたかもしれない……。 だが……。  もしあなたにミザリィを殺されていたら、 私はきっとあなたを許せず……。  今こうして、共に酒を飲める友を、 永久に失っていたことだろう。 グイード:……。 ヴァルター:失ったものは大きかったが、 それは全て取り戻した。  ……だから、これでいい。  後悔するようなことなど、 あのときには、なにも無かった。  ……それでいい。 グイード:……そうか。そうだな。  だがヴァルター! 一つ言っておく!  オレはお前の友じゃない! 先輩であり、兄弟子だろうが! ヴァルター(笑顔):……ああ、そういえば。  つい忘れていましたよ、ははは。 グイード:まったく、武術のスジがいいからと、  甘やかし過ぎたようだ。 すこし厳しくせんとな。  ほら、もっと呑めヴァルター。 命令だ! ヴァルター(笑顔):了解であります、グイード殿! ※グイードとレミー レミー:グイード殿。 僕が言えた義理じゃあないが、  鍛錬は真面目にしておきたまえよ。 仮にも主君からの、 命令だろう? グイード:大丈夫大丈夫、訓練なんざ、 若い頃に散々したからな。  今はその貯金を減らさないように、 こうして酒で養生しているわけだ……。  ヒック。 カラス:……ガァ……。 レミー:ククク……。  なるほど、本当の実力を、 僕には隠しておきたいというわけか。  確かに、何時敵に回るかわからない、 胡散臭い騎士だからねえ、僕は。 グイード:……へえ、なかなか切れるなお前。  俺の考えを一発で見抜くたあ……。 まるで闇の連中の魔法だな。 レミー:そんな大それたもんじゃあない。  あなたが女性によくかける、 魔法じみた魅惑に比べれば。 グイード:趣味が悪いぜ、見てるのか。 レミー:必要があれば。  ああ、寝る前に呑みすぎるのは、 やめたほうがいいな。 寿命が縮むぞ。 グイード:ふん、むしろ縮んでしまえと思うがな。  だが、今後は控えよう。 お前に寝首をかかれちゃかなわん。  だがお前も、 そのカラスに頼りすぎるなよ。 視線をカラスに送りすぎるぜ。 レミー:む……。 グイード:お前のやり口は大したものだが、  カラスとお前、どっちが企んでるのかな? ふふふ……。 レミー(怒り顔):ククク……侮っていたな。 恐ろしい騎士だよ、あんたは……。 ※グイードとコルネリウス:1 グイード:……。 こねえな、コルのやつ。  チッ……。また悪い虫が湧いたか。 あのガキめ。  マノン、今日の訓練は無しだ。 ひとっぱしり、街中まで行くぞ。 下層民:うひゃー! 金貨だぜ!  へへへ……。 いつもありがとうございます、 コルネリウスの兄貴。 コルネリウス:ああ、メシなり武器なり女なり、 好きなものを買えよ。  お前達が俺の従者ってことを忘れず、 ちゃんと俺が遊ぶ供をするなら、  またいつでも金はやる。 下層民:お、おれは運がいいや。  こんな太っ腹の、ご主人に、 拾い上げてもらえたなんて。  ……んが? グイード:……。 下層民:んが!? き、騎士様だ! 騎士様がもう一人! グイード:おい、ぼうっとするな下民。  騎士と騎士が話をするんだよ。 さっさと消えろ。 下層民:はっ、はい……。 でも……。 コルネリウス:……いいよ、行け。 下層民:はっ、はい! コルネリウス:……ふん。 何しに来た、グイ……。  ぐああああっ! グイード:つまらん遊びはやめろと、 言っただろうが、このガキ! コルネリウス:ぐうっ……や、やめろ……。 くるし……! グイード:王様ごっこが楽しいか?  くだらん下民どもなど束ねてみても、 自分の身が穢れるだけだぞ。 コルネリウス:あ、あんたに言われたかねえ!  お、俺がなにをしようが、 勝手だろうが! グイード:そうはいかない。 かつて愛したひとの息子だ。  それに、オレは自分の価値を落とすような つまらん遊びは、しなかったぞ。 コルネリウス:くそっ! グイード:……やれやれ。 最近の若い奴らは、やる事が卑小な割に、  プライドばかり高くて始末におえん。  どうせやるなら、 もっとマシな事をやればよかろうに。  ……どうにもわからん。 ※グイードとコルネリウス:2 グイード:……おいおい。 またこねえな、コルのやつ。  こないだのじゃ、目が覚めなかったのか?  ……オレとしたことが、 どうやら加減を間違えたらしい。  マノン、今日も訓練は無しだ。 だが退屈せずに済むぞ。  今日は久々に、荒事だ。 コルネリウス:ぐあああっ!? 下層民:うひゃー! 金袋が落ちたぜ! 下層民:みろよ金貨だ、金貨がどっさりだ! コルネリウス:お、お前達、なんのつもりだ……。 下層民:ぎゃはは! なんのつもりだってよ! 下層民:俺たちゃぁ、頭がいいのさ!  いちいちあんたに金をもらうより、 あんたの金貨を奪ったほうが早いだろ!? 下層民:早い早い! コルネリウス:お、お前らは、どうしようもない馬鹿だ。  童話にある『黄金の毛を生やす羊』を、 殺すようなマネをしているんだぞ! 下層民:俺たちをケムにまこうったって、 そうはいかねえぞ! コルネリウス:……こ、言葉が通じん。  俺はこんな奴らと、 つるもうとしていたのか……。  くそ、せめてこの毒さえ飲まなければ、  こんな奴らに遅れをとったり しなかったものを……! グイード:『たら』『れば』を言ってる時点で、 騎士として甘いんだよ、ガキ。 コルネリウス:グ、グイード! 下層民:ひ、ひいっ!? こないだの騎士だぁ!? 下層民:武装してるぅ! 殺されるうっ! に、逃げろぉ! グイード:ああ、逃がしてやるとも。  お前達みたいな、臭い命をとっても 名誉の足しにもなりゃしない。  だが騎士をなめるとどうなるか、 ってのを体で語る、 生き証人になってもらうぞ。  馳せろマノン! まずは大きな奴の腕からだ! ……。 …………。 コルネリウス:……くっ。 グイード:どうだ、ちったぁ、 身に染みたか? コルネリウス:……俺が、馬鹿だった。 グイード:それがわかりゃあ、上等だ。 さあ、酒でも飲んで、忘れろ忘れろ。  そんな顔してると、 大事な妹が心配するぞ。 早くいつもの調子に戻ることだ。 コルネリウス:……あ。 グイード:なんだよ、なんかまだ、 文句でもあるのか? コルネリウス:……ありがとう。 グイード:は。 男に礼を言われても、 うれしかないねえ。 ※グイードとギィ グイード:あ? おまえ……。 ギィ:ギィ……と申す。 グイード:……人が多いな。鍛錬場の方に行くか。 グイード:驚いたぜ。  『最強の騎士』様ってのは、 おまえさんだったのか。  『竜殺し』のエセルバートだとか、 いろいろ噂されてるみたいだな。  だが、そうか、アンタか。ハハハ! ギィ:迷惑でしかない。 グイード:あっちでだってそうだったじゃねーか。  注目浴びないよりかは全然いいだろ。 で、相変わらず『強い奴探し』か? ギィ:少々、誤解があるようだが……。 グイード:『扉を開ける』ってアレだろ?  俺ァ思うんだがな。 ドンパチで『扉』なんか開かないぜ。  ここらでいい加減、身を固めろよ。 ギィ:おぬしはどうだ。 グイード:ハハ……相変わらずさ。 おまえさんと同じ穴のむじなだよ。  さーて、くっちゃべってるのも何だし、  一丁稽古つけてくれ。ひさしぶりに、 おまえさんの神技を見たくなった。 ギィ:……よかろう。