※ディトリッシュとオーロフ:1 オーロフ:おい、おまえも『闇』か? ディトリッシュ:私の名は、『おまえ』でも『闇』でもない。 ディトリッシュだ。 オーロフ:そうか、俺はオーロフってんだ。 一丁、訓練につき合えよ。 ディトリッシュ:よくおまえのような粗野な男が、 騎士などになれたものだ。  私はおまえのお遊びにつき合ってられるほど 暇ではない。 オーロフ:おまえ、 『人狼の俺が怖くて仕方ない……』 って顔してるぜ。 ディトリッシュ:……犬はおびえるほど吠え猛る というが、本当のようだな。  よかろう、相手になってやる。 ※ディトリッシュとオーロフ:2 オーロフ:……テメー、腕を上げたな。 ディトリッシュ:おまえもなかなかやるな。  惜しむらくは、その武力に知力が 追いついてないことだが。 オーロフ:ハッ、よく言うぜ、貧血野郎。  ニワトリでも捕まえて、生き血を 飲んだ方がいいぜ。 ディトリッシュ:野鳥の血をソースに利用する料理もあるし、  案外イケるかもしれないな。 オーロフ:えっ、そんな料理があるのか!? ディトリッシュ:……騎士のくせに、 本当にものを知らないな。  仕方ない、おまえに教えてやろう。  料理を作るとき、同じ食材の別の部分を 流用することで、食材に合った味を……。 ※ディトリッシュとオーロフ:3 ディトリッシュ:また私の勝ちだな。 オーロフ:あーっ、勝てねー! あの足払いがかわされるとはなー。 ディトリッシュ:マンハイム領内では、多くの『闇の者』  相手に訓練を積んでいたからな。  むしろ、人間相手より、『闇の者』を 相手取った方が慣れているのだ。 オーロフ:そうなのか!? おまえ、 一言も言わなかったじゃねーか!  きたねーぞ! ディトリッシュ:一言も尋ねなかったではないか。 オーロフ:あ、そうか。 ディトリッシュ:だが、おまえも筋はいい。  動きを単調にせず、生来備わった 肉体を十二分に活かす方法を考えろ。 オーロフ:爪や牙か? 決闘じゃ使えねえしな。 ディトリッシュ:人間の社会である以上、 人間に有利な規則が作られるものだ。  だが、おまえの肉体を活かす場面に、 かならず遭遇することがあるさ。 オーロフ:おめーも、『闇』の能力を 使うことができるのか? ディトリッシュ:いいや、私は半端者だからな。 そこまでの力はない。 オーロフ:人狼だって人間と狼の合いの子、 半端者には違いねえ。 ディトリッシュ:そんなものか。 オーロフ:そんなもんだ。 ※エリオットとオーロフ エリオット:はぁ、はぁ、はぁ……。 オーロフ:どうした、もう息切れか? 俺ァまだイケるぜ! エリオット:すごい活力ですね……。 人狼だからですか? オーロフ:それ以前の問題だ。 てめーは鍛え方が足りねえ。 エリオット:やっぱりそうなのかなー。 オーロフ:……まあ、まだガキなんだ。 あと何年か鍛錬に励めば、  それなりにモノになるだろ。 ……多分。 エリオット:本当ですか!? がんばります! ※イリヤとオーロフ イリヤ:……このままでは負ける! せいッ! オーロフ:うおっ、な、なにすんだオメエ! 目を狙うなんて、どうかしてるぜ! イリヤ:戦場では、卑怯もなにもない。 オーロフ:わかったよ。そっちがそのつもりなら、 こっちだって爪と牙を使うぜ。 イリヤ:う……。 オーロフ:怖じ気づいたか? イリヤ:……かかってこい! オーロフ:ウオオオオオッ! イリヤ:トォリャアアアアアアッ! 見物人:「まだやってるぜ、あれ」 「いつまで続くんだろうなー」 エクレール:まあ、どうしましたの? 寮長コルドモア:イリヤとオーロフですよ。 ふたりで延々、稽古してるんです。  いまの若者には珍しい、 真剣な稽古ですなー。 オーロフ:ちェりゃアアアアッ! イリヤ:死ねェェェェェェッ! エクレール:ちょっと! 今、『死ね』って聞こえましたわよ!? 寮長コルドモア:いいぞー! どっちも負けるなー!  負けた方には『仕置き』だぞー! エクレール:……アホらし。 お夕飯の支度しましょ。 ※オーロフとフォルカー:1 オーロフ:フーッ、アンタ、思ったより やるじゃねえか。 フォルカー:ははは、私も騎士だからね。 強くなければ、家族を守れない。 オーロフ:家族、か……。 フォルカー:そうだオーロフ君、これから 我が家で食事でもどうかね? オーロフ:え? 俺、人狼だぜ? 見てわかんねーのか!? フォルカー:私はいつも、気に入った相手を 家に招いているのだ。  人狼なんて、いまどき珍しくもないだろう。 オーロフ:す、すまねー、今日は用事があるんだ。 また今度にしてくれ。 フォルカー:絶対だぞ! ※オーロフとフォルカー:2 オーロフ(制服):よう、オーロフだ。 おっさん、稽古の相手になってくれよ。 フォルカー:そうか、人狼は人間の姿を 持っているのだったっけ。  まるで別人だなー。 オーロフ:さあ、始めようぜ。 フォルカー:人間の姿でも、なかなかやるな。  さてオーロフ君、この前の話だが……。 オーロフ:覚悟はとっくにできてる。 あんたの家に行ってやるよ! フォルカー:ずいぶんと乗り気だなー。 人狼の格好じゃないからか? ビアンカ:あらまあ、かわいいお客さん。 オーロフ:ん、あんた、どっかで……? フォルカー:前話してただろう。 オーロフという後輩の騎士だ。  オーロフ君、家内のビアンカだ。 ビアンカ:よろしく。 オーロフ:よろしく。 ……俺のこと、なに話したんだ? フォルカー:そりゃ、夫婦の秘め事ってもんだ。 オーロフ:『秘め事』!? ビアンカ:うふふ、キノコスープは たっぷりありますからね。  たくさん召し上がってください。 オーロフ:…………。 ビアンカ:……ああ? あそこにいるのは、 次女のリイです。  リイ、騎士様にご挨拶なさい。 リイ:あの騎士様、怖い……。 オーロフ:…………! ビアンカ:こら、リイ、なんてこと言うの! リイ:お母さん怒ったー! ビアンカ:すみません、オーロフ様。 ウチの娘ときたら。 オーロフ:……外見ではごまかせない、 というわけか。 ※オーロフとフォルカー:3 ※漆黒の殺人鬼(フォルカー版?)の後、原文ママ フォルカー:この前、ウチのリイが人狼の殺人鬼に  襲われてくれた時、助けてくれたろ? オーロフ:ん? ……ああ。 フォルカー:『あの人狼にお礼が言いたい!』 って、うるさいんだ。  今晩でも来てくれないか。 オーロフ:この格好でか!? フォルカー:君は、娘の命の恩人だ。  君を悪く言う奴がいたら、 私が許さぬ。 ビアンカ:きゃっ、人狼!? オーロフ:…………。 フォルカー:おい、オーロフ君だぞ。 忘れたのか。 ビアンカ:……ああ、そうでした。  この前、我が家に来てもらった時は、 人間の姿でしたもの。 リイ:あっ! オーロフ:!? リイ:オオカミさんだ、オオカミさん!  私を助けてくれたオオカミさん! オーロフ:お、おい。 リイ:リイね、ずっとオオカミさんに お礼を言いたかったの!  ありがとう! オーロフ:んー……。 リイ:どうしたの、オオカミさん。 フォルカー:オオカミさんはとまどってるのさ。 リイ:ねえオオカミさん、触らせて! オーロフ:ん、ん……。 リイ:ふかふかー。 オーロフ:…………。 リイ:ふかふかー。 オーロフ:…………。 リイ:ふかふかー。 オーロフ:…………。