※アストラッドとエリオット エリオット:本日もよろしくお願いします! アストラッド:今日は、剣術じゃない訓練を しようと思うんだ。 エリオット:どういう訓練ですか? アストラッド:騎士は、決闘するだけが能じゃない。  時には姫を守り、暗殺者の居場所を 突き止めることがあると思う。 エリオット:その通りですね! アストラッド:だから、隠密と索敵の訓練を 行おうと思うんだ。 エリオット:どうやるんですか? アストラッド:隠密側は、王城の中に隠れる。  索敵側が隠密側を発見したら、交替だ。 これを、交替々々に行う。  隠密側は暗殺者の心理を読み、 索敵側は暗殺者を発見できるようになる。 エリオット:なるほど! アストラッド:では、まずオレが隠密側だ。  エリオットは100数えてから、 オレを探し出してくれ。 エリオット:はい! アストラッド:では、始め! エリオット:いーち、にーい、さーん……。 エリオット:いないな〜。 エクレール:あらエリオット様。  植え込みを覗き込んだりして、 なにをなさっておいでです? エリオット:あっ、エクレール殿!  はい、僕は今、 アストラッド様との訓練の途中なんです。 エクレール:せっかく姫様からいただいた制服を 土埃で汚してしまうなんて、  いけない訓練ですわね。 エリオット:暗殺者を捕らえる、という仮定の下、  隠密側と索敵側に分かれて 相手を捜すんです。 エクレール:隠密側はどこにいるか、 わからないんですの? エリオット:はい、王宮のどこかにいる、としか。 エクレール:それ、ただの『かくれんぼ』 ではないかしら。 エリオット:……アーッ! エクレール:まったくアストラッド様ったら、  昔と全っ然変わってないんだから……。  エリオット様。 あんなバカチン放っておいて、 お茶会にしましょ。 エリオット:え、でも、アストラッド様は どうすれば。 エクレール:そのうち『かくれんぼ』に飽きて 出てくるでしょ。  さ、行きましょ。 アストラッド:エリオットの奴、まだオレを 見つけられずにいるのかなー。  そろそろ見つけてくれないと、 寒くなってき……。 ハーックション! ※エリオットとディトリッシュ エリオット:ありがとうございましたっ!  とっても勉強になりました。 マンハイムの剣技ですか? ディトリッシュ:マンハイムには、オグル鬼や猫人ク・メルが  いて、変わった技を教えてくれる。  もっとも彼らの技は、種族の特性を活かした 技が多い。オグルなら巨大な体と怪力、  ク・メルならその敏捷さ、だな。  だから、自分の体に合った技に アレンジする必要があるが。 エリオット:すごいなー。 僕もマンハイムに行けば、 強くなれるのでしょうか? ディトリッシュ:あそこは、並の人間では住めないよ。  それに、闇の者たちは、自分たちが ターブルロンドの支配者と思っている。  おまえのような子供が行ったら、 たちまち踏み潰されてしまう。 エリオット:はい……でも……。  僕は将来、世の中のいろいろな場所を 見てまわりたいんです。  知識があれば、姫様のお役に立てるから。 ディトリッシュ:……そんなに行ってみたいなら、  少しずつ、マンハイムのことを 教えてあげよう。 エリオット:はい、ありがとうございます! ※イリヤとエリオット:1 エリオット:たあーっ! イリヤ:負けた……? オレが? こんな……こんなのに? エリオット:稽古ですから、勝ち負けはありません。 イリヤ:…………。 エリオット:イリヤ様は、力みすぎだと思います。 剣を持つ手に柔軟性がないので、  逆に剣を落としやすいのではないですか? イリヤ:知ったような口を! オレの剣は、実戦の中で鍛えられた剣だ。  おまえのような温室育ちの剣と違う! エリオット:すみません、差し出がましい口を。  ですが、決闘に臨むのであれば、やはり、 正当な剣技も学んでおいた方が……。 イリヤ:説教はたくさんだ。 フン! エリオット:どうしてあんなに怒っているのだろう……? ※イリヤとエリオット:2 エリオット:あっ、イリヤ様。 稽古をご一緒しませんか? イリヤ:…………。 エリオット:あの、稽古というのはですね、 槍の扱いを学んだり、 体力を……。 (イリヤが立ち去る) エリオット:あ……。  イリヤ様、 目を合わそうともしてくれない……。   ヴィンフリート:エリオット君、彼の気持ちも、 酌んでやるといい。  彼は落ち込んでいるんだよ。 エリオット:あっ、執政官殿、 お仕事ご苦労様です!  ……落ち込むって、 どうしてです? ヴィンフリート:彼も、プライドが高い若者だからな。  彼は元々、ターブルロンドの東にある、 グラニという国の王子なんだが、  市民の蜂起で国を追われていてね。  彼は国を取り戻すために、 力がいると考えている。 もちろん、剣の腕もだ。  彼は彼なりに、研鑽に研鑽を重ねてきた。 なのに、年下の君に打ち負かされてしまい、  彼のプライドは崩れ去ったというわけだ。 エリオット:うーん、うーん。 でも、それはおかしいと思います。  稽古はそもそも、力がないからすること。 だから負けることも当然なのに……。  そこでそんなに落ち込んでたら、 先に進めないじゃないですか。 ヴィンフリート:彼にとっては、稽古だろうが、 敗北は敗北なんだろう。  おそらく彼だって、 他の年上の騎士に負けたのなら、  相手を避けるまでにはならないだろうが。 エリオット:僕が、子供だからいけないのでしょうか。 ヴィンフリート:いや、それは彼の弱さだ。 君のせいじゃあない。 エリオット:では僕は、 どうすればいいのでしょうか。 ヴィンフリート:さて、そうだな……。  君達は騎士なのだから、 やはり言葉ではなく、  腕で分かりあった方がいいのではないかな。 エリオット:……腕、ですか。 ※イリヤとエリオット:3 イリヤ:……エリオット。 エリオット:ハ、ハイ!? イリヤ:剣を取れ。 今日は、おまえに勝つ。 エリオット:えっ……それじゃ、稽古相手に なってくれるんですか!? イリヤ:勝負だッ! イリヤ:せいっ! エリオット:あっ! イリヤ:よし! これで、オレの勝ちだな! エリオット:……っつ〜っ。 さすがイリヤ様だ……。 イリヤ:あっ、おい、手から血が出てるぞ。 医務室に行かないと。 エリオット:え? これくらい大丈夫ですよ。 イリヤ:うるさい、ほら、こっちに来い! 医務室に行くぞ! イリヤ:チッ……薬なんか残ってやしない。  しかたない、ウイスキーで消毒する。 少し我慢しろ。 エリオット:……ッッッ! イリヤ:よし、あとは包帯を巻いて…… 終わりだ。  よく我慢できたな。 エリオット:よかった。 イリヤ:なに? エリオット:イリヤ様って、本当は優しいんだ。 イリヤ:優しくなんかない!  オレがケガをさせた相手だ、 オレに責任がある。 エリオット:優しくない人は、自分がケガさせた  相手のことなんて考えないと思います。  なんで、『優しい』って言われると 怒るんですか? イリヤ:……あ、そうか。 怒る必要はないのか。 エリオット:そうですよ。ふふっ、おかしいの。 イリヤ:はは……。 ※エリオットとオーロフ エリオット:はぁ、はぁ、はぁ……。 オーロフ:どうした、もう息切れか? 俺ァまだイケるぜ! エリオット:すごい活力ですね……。 人狼だからですか? オーロフ:それ以前の問題だ。 てめーは鍛え方が足りねえ。 エリオット:やっぱりそうなのかなー。 オーロフ:……まあ、まだガキなんだ。 あと何年か鍛錬に励めば、  それなりにモノになるだろ。 ……多分。 エリオット:本当ですか!? がんばります! ※エリオットとギィ:1 エリオット:うわっ! ギィ:立て。 エリオット:も、もうダメです。立てません。 ギィ:剣は折れておらぬ。 五体共に無事。 ならば立てる。 エリオット:う、ううう……ッ! くそーっ! ギィ:それでよい。 かかって参れ。 エリオット:たァーッ! エクレール:……これでよし、と。  これまたこっぴどくやられましたわね〜。 エリオット:あんなの訓練じゃありません!  あの人は、僕を使って 憂さを晴らしたいだけなんだ! エクレール:そうですわねー。  子供相手にこの仕打ちは どうかと思いますわ。 エリオット:『子供』……? エクレール:まるで子供を喰らうオグル鬼ですわ。 児童虐待ですわよ! エリオット:『児童』……?  ……そうか、そういうことか。 あの人は僕を、子供扱いしないんだ。 ※エリオットとギィ:2 ギィ:本日はここまで。 エリオット:ありがとうございました! ギィ:最近のおぬしの進歩には めざましいものがある。  この調子で日々精進を続ければ、 やがては立派な騎士となろう。 エリオット:本当ですか!? ありがとうございます! ギィ:失礼致す。 エクレール:……これでよし、と。  今日もこっぴどくやられましたわね〜。 エリオット:ギィ殿が、僕のことを 認めてくださった……! エクレール:それはよかったですわね。 傷の量は減っておりませんけれど。 エリオット:『この調子で日々精進を続ければ、 やがては立派な騎士となろう』  って言ってくれたんです。 エクレール:あの騎士にそこまで言わせるなんて。  これまでの努力が実りましたわね。 エリオット:はい! エクレール:ですが、『この調子で』だなんて、  まるで、もう訓練してくださらないみたい ですわね。 エリオット:あ……。 エクレール:でも、もう生傷増やすこともないのだし、  いいんじゃないでしょうか? ※エリオットとギィ:3 ギィ:立て。 エリオット:うっ、う……あ……。 ギィ:私と戦う気力も残っておらぬか。 ならば戦場では死ぬのみ。  いま、ここで死ぬか? エリオット:くッ……!  ま……まだまだァーッ!  ぐあっ! ギィ:よかろう、本日はここまで。 エリオット:ふう、はあ、ふう……。 ギィ:落ち着いたらこれを食うがよい。 エリオット:このパン……くれるんですか? ギィ:失礼致す。 エリオット(笑顔):…………。 エクレール:……これでよし、と。  またまたこっぴどくやられましたわね〜。  ……どうしました? パンなんか見つめてニヤニヤして。 エリオット:ギィ殿が、僕のためにくれたんです。 エクレール:へえ……オグル鬼のような方とばかり  思っておりましたけれど、意外とやさしい ところもおありですのね。 エリオット:うん、このパン、おいしいです。 エクレール:そんなにおいしいの? 私にも一口くださいませ。  ……フツーのぼそぼそしたパンですわね。