・コルネリウス コルネリウス:フィーリア姫。 ご機嫌麗しゅうございます。  さて、この度は一体どのようなご用件で、  このコルネリウスをお城へお呼びに なったのでしょうか?  ……と一応伺ってみたのですが、 いやいやいや、みなまで仰る必要も  ございません。 俺がひとたび当ててご覧に入れましょう。  ずばり、フィーリア姫は一人で、 窓の外を眺めているのも退屈で、  誰か話し相手が欲しかった。  ……違いますか?  家別に、そう否定なさる必要も ございません。  フィーリア姫が日々を楽しく過ごせるように  計らうのもまた、俺たち騎士の務めで ございます。  こうして、ご公務でお城から出ることが できないのもツラいことでしょう。  心中お察し致します。  実は、俺の妹もそうなんですよね。  アイツは俺と違って身体が弱くて 家に篭もりがちなのです。  いつも窓の外を眺め、溜息を ついているのですけれども、そんなときは  俺が話し相手になってやるのです。  まあ俺も騎士です。 自慢ではございませんが、  活躍話のいくらかは持っております。  それを話してやると、妹は大変喜ぶのです。  気に入った話は、何度も何度も聞きたいと せがむものでしてねえ。  まあそれだけ、お兄ちゃんが大好きで、 その活躍を聞きたいということ  なのでしょうな。  はっはっはっはっはっは! >可愛らしい妹さんですね。 コルネリウス:フィーリア姫、やっぱり わかってしまいますか!  そうなんですよね、俺の妹は、 『可愛い』という言葉では  言い表せないほどに、可愛いのです!  いやぁ、隠し事はできないものですね。  妹の可愛らしさを象徴するような エピソードはまだあるのですが……。  フィーリア姫には、いずれ、 その話もお聞かせ致しましょう。  いや、なに、こうやって思い出すだけでも、 思わず笑みがこぼれてきてしまうような  話でしてね――。 >今度私にも、そのお話を聞かせて下さい。 コルネリウス:ええ、構いませんよ。 フィーリア姫がお望みとあらば、是非に!  妹の気に入っている話のベストテンが あるので、それをフィーリア姫にも、  10位から順番にお聞かせ差し上げますよ。  それでは今日は早速、俺が領主に命じられ、 盗賊団に盗まれたレイラの首飾りを  奪還したときのお話を致しましょう。  この話には、妹がとても気に入った部分が ありましてね。  わんさわんさと襲いかかってくる盗賊を、 えいやえいやと俺が斬り伏せていくシーン  なのですが――。 >妹さんも、苦労しているようですね。 コルネリウス:……ふむ。 妹が苦労している、ですか。  申し訳ありませんが、フィーリア姫。  今の俺の話で、どこをどう解釈したら、 そのような結論に行き着くのか、  今ひとつ解せないのですけれども……。  いえ別に、フィーリア姫が 悪いのではございません。  俺の理解力が不足しているのでしょう。  妹が苦労していると聞くと、 俺もなんだか不安になって参りました。  一度妹に連絡をとり、何か不自由なことが 無いか、聞いてみたいと思います。  申し訳ありません。 そういう事情ですので、本日はここで  失礼させて頂きます――。 コルネリウス:フィーリア姫。 最近少し、浮かない表情をしていらっしゃる  ようですが、何か心配事でもおありですか?  いやいやいや、やはりみなまで 仰る必要もございません。  大方の察しはついております。  ずばり、フィーリア姫の真の兄君、 フィーリウスのことですね?  フィーリア姫は王族と言えども年頃の少女。  多感なこの時期に、頼れる兄がいなくなって しまうのは、おツラいでしょうに……。  アイツのいない間、俺が姫様のおにいちゃんの 代役を務めようと思っていたのですが、  そろそろ限界が近いのかもしれませんね。  まったくフィーリウスの野郎は……。  こんな可愛い妹をほったらかしてどこを ほっつき歩いているんだか――。  ……今度会ったらただじゃおかないからな。  ――おっと申し訳ない。 フィーリア姫の前で、このような怖い顔を  見せてしまうとは、お兄ちゃん失格ですな。  いえ、なぁに。 心配ありませんよ、フィーリウスは 必ず戻ってきますって。  アイツは無愛想だけども、決して可愛い妹を 哀しませるような奴じゃないって、  フィーリア姫もわかっておいでですよね?  ですからほら、姫様も元気をお出し下さい。  フィーリウスが戻って来るまでの 今しばらくの間は、俺が貴女の  お兄ちゃんですよ。 >……貴方に、兄の代わりは務まりません。 コルネリウス:……そうですか。  いえ、ごもっともです。 俺も少々でしゃばり過ぎましたね。  申し訳ありません。  ……ですが、フィーリウスがいない間、 姫様を守るのは俺の役目です。  その点だけはどうか、お任せ下さいませ。  今日のところは、 これにて失礼させて頂きます。  ――それでは。 >兄が戻ってきたら貴方はどうするのですか? コルネリウス:フィーリウスが戻ってきたら、ですか。  なるほど、フィーリア姫もなかなかに 難儀な質問をなさいますね。  ですが、その答えは既に決まっております。  恐らく俺は、貴女のお兄ちゃんを 卒業することになるでしょう。  やはり、一人の妹に二人のお兄ちゃんでは、 いささか大変かと思われますからね。  俺もフィーリア姫のお兄ちゃんに なってみて悟りましたよ。  同時に二人の妹を持つ、大変さを。  まず、愛情の配分。 これが難しい。  妹二人、それぞれに最大限の愛を注げれば  問題はないのですが、現実には俺の身体は ひとつしかないわけで、そうもいかない。  だから、どちらにどれだけの愛情を 傾けるのかを、毎日寝る間も惜しんで  考えているのです。  あちらを立てればこちらが立たず。  できるだけ不公平のないように、 なんて考えると、本当に難しい。  これは、妹が二人のお兄ちゃんを 持った場合にだって、同じことが言えると  思うんですよね。  兄が妹を想うのと同様に、 妹もまた兄を慕っているのですから。  俺は姫様には、その二人の兄を慕う 妹の苦しみを味わって欲しくはありません。  ですから、フィーリウスが 戻ってきたときには……。  あなたのお兄ちゃんの座は、彼に喜んで 譲り渡そうと思っている次第なのです。  俺の気持ちも、姫様と一緒ですよ。  アイツが早く城に戻ってくるようにと、 心から願っております。 >ええ、よろしくおねがいいたします。 コルネリウス:お任せあれ!  俺のお兄ちゃんっぷりは、 この国で一番であります。  フィーリア姫を哀しませたり、 あるいは退屈させたりしないよう、  最大限の努力をさせて頂きますよ!  どうぞ今後とも貴方のお兄ちゃん、 この騎士コルネリウスを、  存分にお頼り下さいませ! コルネリウス:お招きいただき光栄です、姫。  このお兄ちゃんに何か相談ごとですか?  そういえば先日うちの妹も、 このお兄ちゃんを頼って、 半日かけて相談を……。 コルネリウス:ど、どうも、姫。このオレ……  あーいや、私めをお招きいただき、 恐悦しガッ! ……舌噛んだ。