・ユークレース エクレール:あらあら、急がないと急がないと。 ユークレース:おや、エクレールさん、 ごきげんよう。  なにを急いでおられるのですか? エクレール:あらユークレース殿、ごきげんよう。 お早いお着きですわね。  あなたと姫様のご歓談のときに、 お出しするためのお菓子を、  準備しようとしているところですわ。  厨房の人に言い忘れていたので、 頭を下げて作ってもらわないと……。 ユークレース:そういうことでしたか、 大変ですね。  ですが、私はお菓子は結構ですよ。  甘みや油っけが強いものは、 少々苦手でして。 エクレール:あら、そうなんですの? 偏食……というわけでは、 ないのですわよね? ユークレース:ええ、これでも騎士の端くれですから、  好き嫌いを言うようでは始まりません。 ですが、その……。  病に良いものと悪いものというのは、 やはり歴然とあるもので。 エクレール:あっ……そうでしたわね。 すいません、気がつかず。 ユークレース:いえ、私のほうこそ、 先にいっておけばよかったのです。  普段食べるものは、 自分で気をつけて作るので、  ついつい人に言うのを忘れがちで。 エクレール:あら素敵。 殿方ですのに、お料理を? ユークレース:ええ。 必要にかられて学ぶうちに、趣味のように。  ああそうだ。 フィーリア姫に招かれた時間まで、 まだ少々余裕もありますし……。  もしよければ私が厨房に行って、 今日のお菓子を作ってきましょうか。  料理長とは親しいですし。 エクレール:あ、うう……。 そ、それは大変ありがたいですが、  じ、侍女としてのプライドが……。  ……。  ユークレース殿の手作りとなれば、 姫様はきっと喜ばれますわ!  よろしくおねがいいたします! ユークレース:なにやら葛藤と克服があったようですが、  そう言っていただけるなら、 さっそく取り掛かりましょうか。 ユークレース:フィーリア姫、ご機嫌麗しゅう。  私のようなものをお招きくださり、 感謝の念に耐えません。  ご一緒にお茶でもできればと、 本日はこのような菓子を お持ちいたしました。 エクレール:……クッキーですか? ちいさくてかわいらしいですわね。 ユークレース:まあ『そのようなもの』です。  遍歴の騎士の携帯食の一種でして、 堅く焼いたパンと思ってくだされば。  砂糖やクリームは使っていませんし、 おいしい果物も入っていません。  少々薬効のある実を混ぜた程度です。  柔らかく、甘いものになれた方々には、 お口に合わないかもしれませんが……。 エクレール:……ちょっとお薬みたいな 香りもしますわね?  ま、まあ姫様、お一つどうぞ。 >素朴でいい味だわ。 エクレール(困り顔):あら、ほんとですか? 私もあとでいただこうかしら。 ユークレース:フィーリア様にとっては、 かえって珍しい味わいになって、  良かったのかもしれませんね。 エクレール:ふふ、でもこれならば、 お二人とも遠慮なく食べられますわね。  それじゃ、お茶をお淹れしますわ。 >……おいしくないわ。 ユークレース(笑顔):やはり、お口には合いませんでしたか。 エクレール(困り顔):あらら、どうしましょう……。 ユークレース:ではフィーリア姫、こちらをどうぞ。  卵とクリーム、コクァールの粉に、 砂糖をたっぷり使ったケーキです。 エクレール(困り顔):あらまあ、おいしそうですわ!  それはそうと、あの短時間に、 お菓子を二つも作られたのですか? ユークレース:綺麗に整った厨房で、 後片付けをお願いしてしまったからこそ、  できたことですよ。たいしたことでは。 エクレール(驚き顔):さらりと仰いますわね。  達者なのは、武術だけでは ないようですわ! >健康によさそうね。 ユークレース:ええ、すくなくとも、 一般的に体に悪そうなものは、  使っていませんから。  往々にして、そういった体に悪いものは、 おいしく感じるので、  味わいとしてはさびしいかもしれませんが。 エクレール:ふふ、でもこれならば、 お二人とも遠慮なく食べられますわね。  それじゃ、お茶をお淹れしますわ。 ユークレース:今日は、アップルパイを作ってみました。  姫のお口に合えばよろしいのですが……。 ユークレース:お招きいただき光栄です。  今日はいくつか話を仕入れてきました。 気に入ってくださればよいのですが……。 ユークレース:ごほ、ごほっ……失礼、 なんでもありません。  今日はなんの話を致しましょうか……。