>レミー ・グリューネベルク:1 グリューネベルクでの工作を命じられた レミー。 町を歩くと、刺すような視線を感じた。 レミー:いつ来てもピリピリした町だねえ。  ま、この雰囲気、僕は嫌いじゃないけど。 兵士:そりゃピリピリもするさ。  猛獣や闇の者が森からやってくる、 ここはそういう町なんだから。 レミー:ああ! 森の番人の住処、だったね。 いやいやありがたいことですよ。  おかげで僕らは枕を高くして寝られます。 兵士:……。 余計にカリカリさせるようなこと、 言わないでくれよな。 ・グリューネベルク:2 グリューネベルクでの工作を命じられた レミー。 他領では珍しい店々を巡って歩いた。 レミー:品揃えが悪いなあ。 『罠の店』なんだろ?  こんなんじゃお客さん納得しないよ? 罠屋:何の罠を探してんだ、何の。 うちが扱ってんのは、獣を獲るための罠。  狩人でもないあんたにゃ用ナシのはずだぜ。 レミー:それはそうだけどさあ。 僕にもこだわりってものはあるんだよ。  君たちの売ってる罠は……ひどすぎるよ。 まずもってコンセプトがなっちゃいない。  いつ、どこで、何を、どうするための罠か。  それを考えれば、もっと工夫できるでしょ? 罠屋:む……。たとえば? レミー:うん、たとえば――このトラバサミとかさ。  踏み板でバネが動くって基本はいいとして、 ここと、この部品の繋ぎをさあ……。 ・グリューネベルク:3 グリューネベルクでの工作を命じられた レミー。 考案した罠が評判になり、領主に呼ばれた。 エピドート:やるのう、おぬし。 レミー:こんなことで褒められても。 彼らは罠のことをまるでわかっちゃいない、  それが僕には我慢ならなかっただけですよ。 エピドート:そう言ってやるな。 それが一応役に立つなら、変えはせぬ。  そういうもんじゃよ、大抵の連中はな。 レミー:そのお歳まで、そういう抜けた連中を、 えんえん見つづけてきたわけですか。  ……僕もそうなるのか? 嫌だ、ああ嫌だ! エピドート:王女なり、宰相なり、 その片腕となっておぬしが世の中を変えろ。  そうすりゃ少しはマシになるわい。 レミー:また心にもないことを……。 そのジョーク、全然笑えないですよ。 エピドート:ひひひ。 王女殿下もずいぶん面白い騎士を囲っとる。  なかなかに目のつけどころがいい娘じゃの。 ・サンミリオン サンミリオンでの工作を命じられた レミー。 遠乗りに出て、領主と不思議な会話をする。 レミー:僕の愛馬の名前ですか? トラジククロウって言います。 ロドヴィック:トラジック・フロウ、というと 「悲劇的欠陥」かね?  どういう意図でつけたのだ。 レミー:いや、トラジック・フロウじゃなくて。  トラジック・クロウ。短くして、 トラジククロウです。 ロドヴィック:……「悲劇のカラス」。 やはり君の考えることはよくわからん。  それは馬につける名前なのかね。 レミー:いや、まあ、僕といったらカラスでしょ?  わかりやすいと思うけどなあ。 悲劇のほうは……ま、秘密ってことで。 ロドヴィック:……。 ・ベルジュロネット:1 ベルジュロネットでの工作を命じられた レミー。 取っ掛かりを見出すべく、町を歩いていた。 商人:はいさ、まいどありー! さあさ他のお客さんも急いだ急いだ、  今朝とれたてのフルーツ、残り少ないよ! レミー:そういやあ、ベルジュロネットというと、  果物のうまい土地ってイメージがあるな。 ええとたしか……。  うん、思い出した。 代々の領主が、うまいワインをつくるため、  こりずに果樹植林をしまくってるんだっけ。 あの領主どのの血筋、って感じだね。  ふむ……。 今回はこのセンで少し動いてみるかな。 ・ベルジュロネット:2 ベルジュロネットでの工作を命じられた レミー。 交易について調べるべく、市場に来ていた。 レミー:大体わかってきたぞ、この領の仕組み。  果物を作りまくって加工、ワインとか ドライフルーツにして、方々に売る。  国内はもちろんのこと、諸外国でも ベルジュロネット産の商品は人気が高く、  いい値がつく。華やかなことだね。  ……。  つまり、交易路を抑えられたら干上がる。 ――この近辺だと、やっぱり、  アルジャンへの街道だろうなー。 ・ベルジュロネット:3 ベルジュロネットでの工作を命じられた レミー。 『活動』を終え、領主に招待された。 オベルジーヌ:いやあ助かったよ。 アルジャンへの街道を賊に塞がれては、  我が領の流通は滞ってしまうからねえ。 レミー:いえいえ。ご領内の不穏な動きを、 たまたま事前に察知できたもので。  動きさえわかれば、叩くのは簡単ですし。 オベルジーヌ:たまたま事前に察知、ね。  ……ひとつ聞くけど、彼らの暴挙、 その「首謀者」は誰だったんだい? レミー:僕も、そこまでは存じません。 オベルジーヌ:そこまでは知らない、か。 何も即答しろとは言っていないよ、  推測くらいはできるだろ? それとも……。  さすがの君もそこまでは言えない、 の間違いかな。 レミー:仰る意味がよくわかりません。 オベルジーヌ:……ま、いいさ。  領内にはびこる胡散臭い連中を、 あぶり出せたってだけでも感謝に値する。  可憐で純真なる王女殿下にお伝えあれ。 このオベルジーヌ、感謝を捧げるとともに、  よき騎士をお持ちで羨ましく存じます、と。 レミー:光栄至極。 ――お言付け、確かに承りました。 ・アルジャン レミー:ククク……。 この町は何時来ても、 にぎわっているねえ。  だが不思議なものだ。 豊かな町ほど、人々の間に、 嘘と、欺瞞が満ちている……。 カラス:……ガァ……。 レミー:そうだね、今日を生きることに必死な者は、 人を騙す術などを考える間もない。  余裕があるからこそ、 卑怯者になれるのさ……。 ククク……。  さあ、仕事だ。 この町の人間に施すに相応しいやり方で、  王女派の機運を高めるとしよう。 ・マンハイム:1 マンハイムでの工作を命じられた レミー。 怪しげな町だが、彼にはむしろ……。 レミー:やれやれ、フィーリア様も、 こんな地の果てまで良くぞ、  飛ばしてくれたものだ。  しかし……。 ふふふ、いいね。 やはりこの土地は、なじむ。 マンハイム市民:ふぇふぇ。 気を抜かんことじゃよおにいさん、  この町の者はみんな嘘つきじゃて。 レミー:ご忠告ありがとう。 つまり、そういうあんたも、嘘つきなんだね?  だがあんたが嘘つきだとすると、 『うそつきばかり』という言葉も、  嘘ということになるね。 マンハイム市民:ふぇふぇ……さっしがいいのう。  改めて、混沌の土地マンハイムへようこそ。  のーんびり羽根を伸ばしていくとええて……。 ・マンハイム:2 レミー:ククッ……。 何度見ても、趣味の悪い城だ。 反吐が出る。 マンハイム市民:おい、そこの人間! 今なんと言った! レミー:おや、犬が一匹いたか。 ご主人様の趣味を嘲笑されて、 腹が立ったのか?  まあ、仕方ないか。 犬の価値観なら、それが当然……。 ククク……。 マンハイム市民:ひ弱な人間が! そのふざけた言葉、 死んで後悔しろ! カラス:……ガァ……。 レミー:満腹かい? あんな犬でも、さすがに闇の者は、 強い魔力を持っているな。  もう少し連中を喰らえば、 おまえもかつての姿を、 取り戻せるかもしれないねえ。  ……だが、まあ。 今の僕たちは、フィーリア様の騎士。 役目を全うするとしよう。