ヴィンフリート:今日が、運命の日か。 エクレール:姫様の準備は、すべて整いました。  あとは領主達の考え次第ですわ。  物憂げですわね、執政官殿。 ヴィンフリート:殿下と私たちが『試練』として 行ってきたことが、  どのような結果を生むのか。  それがわかってしまうのが、 すこし恐ろしくてな。  私は最初の目的どおりに、 王家を守ることはできるのだろうか。  そして……。 殿下は……。 エクレール:心配性ですわね。  私はなんにも心配してませんわよ。 姫様なら、きっと大丈夫です。  ……王家がどうなるかはまあ、 知ったことではありませんけどね。 ヴィンフリート(笑顔):ふっ……。 君はいつも、そうだったな。  願わくば大いなる騎士王よ。  あなたの血を継ぐものである殿下に、 あなたのご加護を……。 アストラッド(困り顔):フィーリア、大丈夫かなあ。 ヴァルター:もう『剣の誓約の儀』は、 始まっているころだな。  もう、俺たちに出来ることは終わった。 あとは祈るしかない。 アストラッド:……ああ。 ……騎士王様。そして聖騎士たちよ。  どうかフィーリアを守ってあげてくれ。 イリヤ:……フィーリア。 お前は、オレのようにはなるなよ。 ディトリッシュ:おまえに、祈る相手は居るのか? イリヤ(怒り顔):ディトリッシュか。  貴様こそ、騎士王に祈れる身ではあるまい。 ディトリッシュ:いや、殿下のためであれば、 私は騎士王と聖騎士たちに祈ろう。  試練の間中、私は闇の者である以上に、 騎士で居たつもりだ。  きっと祈りは届く。 イリヤ:……そうか。 騎士であれば、祈りは届くか。  ならばオレも祈ろう。  あの愛らしく、強く、 それでいて儚いあいつのために。  騎士王よ。 そして8人の聖騎士たちよ……。  この国の王女に、栄光を与えよ……! エリオット(怒り顔):僕はフィーリア様以外、 王として認めません!  もしもフィーリア様が認められければ、 僕がこの剣で領主達を正して……! エヴァンジル(笑顔):はいはい。 子供はおとなしくしていなさい。 ヴァン:我々はすでに、全ての力を尽くし、 王女殿下のために戦ってきた。  そして王女殿下はそれをうけ、 最後の試練に赴かれたのだ。  ならば自分たちにできることは、 ただ王女殿下を信じ、待つのみ。 エヴァンジル:なかなか語るじゃないか、ヴァン。  エリオット君も、奴の落ち着いたところ、 良く見習っておけよ。 エリオット(困り顔):そうはいいましても……。 じっとしては居られなくて……。 エヴァンジル:なにを言うんだ、名門の。 君にはやることがあるだろう。  偉大なる先祖に、お願いだ。  そのかわいらしい声で祈れば、 きっとご先祖様もほだされて、  いい助けをよこしてくれるぞ。 エリオット:はい! わかりました!  我が血の源、偉大なる聖騎士たちよ。 どうかお願いいたします。  ……僕たちのフィーリア様を、 王様にしてください。 エヴァンジル:……私もたまには、 本気で祈ってみるかね。  ……騎士王よ、そして聖騎士たちよ。  あの美しいフィーリア姫に、 あなた方の力を貸してやってください。  ほらヴァン、お前もやれ。 ただ待つよりは、マシだ! ヴァン:……うむ。そうだな。  ……王子。そして騎士王よ……。  どうか、王女殿下に、 あるべき玉座を与えたまえ。 エヴァンジル:……んっ!? なんだ、いまの感覚? ヴァン:むう、何かが、体の内から……。 エリオット(笑顔):……届きました。 エヴァンジル:え、なにが。 エリオット:……聖騎士たちへの、祈りです。 アストラッド(困り顔):うわあ、なんだ! ヴァルター(怒り顔):白い光……?  だが、不愉快ではない。 むしろ……力を貸してくれるような。 門番(サワベリー):うわ、見ろ相棒! 騎士様たちが! 門番(ファットノーズ):輝いている……光っている!  おお……なんと神々しい……! ディトリッシュ(怒り顔):ぐうっ……!? あの光は……!? イリヤ(怒り顔):どうしたディトリッシュ、 しっかりしろ! ディトリッシュ:あれは……。  古の、聖騎士たちの魂の輝き……。  闇を宿すこの身には、 まぶしすぎて……。 イリヤ:大丈夫か!? オレの背中に隠れろ!  くそっ、あっちこっちで、 光ってやがるな。 なんなんだ。 ディトリッシュ:古の聖騎士たちの降臨……。  いや、継承……か。  伝説が、現代に蘇ろうと……。 ぐうっ、うああああああっ! イリヤ:ディトリーッシュ! ディトリッシュ:……ハッ!? こ、これは……。 イリヤ:おまえ、光って……。 大丈夫なのか? ディトリッシュ(笑顔):どうやら古の聖騎士たちは、私のことも、  王家の騎士だと認めてくれたらしい。  ……なんと、嬉しいことか。 イリヤ(笑顔):そうか、よかったじゃないか。  ……どうやら、オレはダメだったらしいが。  って、うわっ!? オレもかよ? オレは関係ないだろうっ! パミラ:ヴィンフリート様! エクレール様! 大変です! クラリッサ:騎士様たちが、輝きに包まれて……。  ……あっ! エクレール:……無為に騒ぐのではありませんわ。  これは騎士王からの贈物でしょう。  古き良き伝説が、蘇るのです。  騎士王のあるところ、8人の聖騎士あり。 そして逆も然り。  ……8人の正しき騎士が揃うとき、 正しき騎士王もまた、蘇るのです! パミラ:……では……では……。 あの光は聖騎士たちの……。  そして、ヴィンフリート様も、 姫様のための、8人の聖騎士! ヴィンフリート(瞑目):……。 エクレール(笑顔):……さあ、高らかに謳いましょう。  私たちの姫様のことを、 正しき王の復活を。  そして領主たちに教えてやるのです。  本当に王たるにふさわしいものは、 一体誰であるのかを。  ……行きなさい! 行ってこの事を、皆に伝えるのです! パミラ:……はい! クラリッサ:はいっ! エクレール(ニヤリ笑い):……ふう。 こんな感じでよろしいかしら? ヴィンフリート:結構。 なかなか手に汗握る勢いだった。 エクレール:あなた、体は大丈夫ですの? ヴィンフリート:痛みはない。 気分は良好、力が沸いてくる感じだ。  とはいえ、力押しで領主全員と戦えるほど、 ではないようだな。 エクレール(怒り顔):まあ。ご先祖様たちも、けちですわね。  もっとこう、凄い加護をくれても。  というか、むしろ最初から……ぶつぶつ。 ヴィンフリート(笑顔):いや、これで十分。これで十分だよ。  英雄の時代は、もう終わっているのだから。  これはいわば、 聖騎士が我々のしてきたことを、  認めてくれた証のようなものだ。  この現象をどう利用するかは、 私たちしだいだということ……。 エクレール(驚き顔):なるほど。 ……って、ヴィンフリート殿、  どうなさいました? 苦しいんですの?  ……泣いておられますの? ヴィンフリート:私たちのしてきたことは、 間違っては居なかった。  間違っては居なかったようだよ。  よかった。 本当に、よかった……! エクレール:思えば、大変な日々でしたものね。  ……今日までお疲れ様でした、執政官殿。