ユーグ:さーて、この城ともおさらばだ。 長いようで短かったな。 ヴァルター:どこへ行く? ユーグ:よう……ヴァルターさん。 アンタにも世話になったな。 ヴァルター:まったく騎士の作法を知らぬ男だ。 それが先輩に対する挨拶か? ユーグ:いいんだよ、もう騎士なんて辞める。  肩で風切って、偉そうに歩くのなんて 俺のガラじゃねえ。思い知ったよ。 ヴァルター:それが、一時でも『ユーグ』の名を 名乗った男の言うことか? ユーグ:は……? ヴァルター:いま騎士を辞めれば、一生このまま、 己の弱さから逃げ続けることになるぞ。  己の弱さと向き合うのだ。 ユーグ:う、うるせー! 俺にどうしろってんだ! ヴァルター:……どうやらおまえは、 一から叩き直さねばならんようだな。  私の従士となれ。 騎士道というものを叩き込んでやる! ユーグ:……わ、わかったよ。 俺も男だ、やってやる! ヴァルター:それでいい。 では来い、『ユーグ』。 ユーグ:おう! ヴァルター:返事は『はい』だ! ユーグ:は、はい……。 カラス:……ガァ……。 レミー(私服):フィーリア様はよくやったよ。 まさか勝つとは思っていなかった。  終わってみれば、全ては元通り。 騎士王の血の聖なるかな……。  また、生きにくい時代が来るね。 明日からはどこに行こうか。 カラス:……ガァ……。 レミー:ん……? 誰かが来る……。 黒貴族の追っ手か? ユーグ(制服):……ゼェ、ハァ……。  あ〜……、 なんとか、追い、ついた。 レミー:ユーグ!? 何をしに来た! ユーグ:ハァ……ハァ……  ……てめえ、こそ……。 バックレやがって……。  事情はしらねえが、 いきなりいなくなることはねえだろ!  驚いたじゃねえか! レミー:こっちにはこっちの事情がある! ……まったく、驚いたのはこっちだよ。  だいたい、もう近づくな……、 と言っておいただろう?  ちゃんとした騎士なら、 僕のような男との交友は、 損にしかならない。 ユーグ:んなことはねえ!  ……そんなこたあねえよ。 そもそもあんたが色々教えてくれなけりゃ、  俺はちゃんとした騎士になれなかった……。  だから、俺が騎士である限り、 あんたは俺の恩人で、朋友だ。 レミー:……。  やれやれ。 そんなことを言われたら、 未練が残ってしまうじゃないか。 ユーグ:レミー、ロザーンジュに残ってくれ。  俺と一緒に、フィーリアを助けよう。 カラス:……ガァ……。 レミー:ユーグ、お前が僕に感じてくれている、 その深い友愛を、  僕もこの鳥に抱いているんだ。  そしてまさにその友愛の為に、 僕はまだ、安住するわけに行かないんだよ。 ユーグ:カラス? カラスのため……?  ん……いや、悪い。 そのカラスがあんたにとってダチなら、  そりゃ仕方ないよな。  そういうことなら、 俺様だって、無理は頼めねえ。 レミー:僕たちが出会ったとき、 君は偽者で、僕は卑怯者だったな。  そして今、君は本物になった。 だから……。 だからもし、また会うことがあれば。  そのときは僕も、卑怯者では なくなっていようと思う。  ……それで許してくれるか。 ユーグ:……許すも許さないも、あるもんか。  きっと信じてるぞ! いつかまた、会えると!