>いいえ、共に知識を極めたいの。 クレメンス:……殿下、いけません!  たしかに知識を蓄えるのは、 楽しく、そして心地よいものです。  そして知識の獲得と探求こそが、 私達人類の発展の源となっています。  ですが、どの過ぎた探求は……。 究極の知識を求める欲望は……。  人の身には過ぎたものです。  まして、それを与えてしまえるものが、 この地上に闊歩している今では!  ……うっ、この光は……。  まさか……っ!! ウィーギンティ:……。 クレメンス:……ウィーギンティ! なぜ君がここに。 ウィーギンティ:手段を問われれば、 すぐにわかることだと答えましょう。  そして理由を問われたなら……答えは一つ。  全ては、人の子らの未来の為に。  王女フィーリア殿。 あなたのお言葉、しかと聴きました。  我々協会は、あなたに知識を授けましょう。  クレメンスがいずれ得るものと同じ、 人の子が理解しうる、 全ての知識を……。 クレメンス:ウィーギンティ! やめてください、彼女は……。  彼女はこの世に生きるべき人です! ウィーギンティ:それを決めるのは、彼女です。  ……全てを知った後、 どうするかを決めるのは。  おそらくは、我々協会が、 予想したとおりになるでしょうが……。 しばらくして開かれた、 剣の誓約の儀の席に、王女フィーリアの姿はなかった。 そして、領主クレメンスの姿もなく、 彼の代理は協会のものが務めたという。 後にターブルロンドの王となったものは、 二人の身柄を確保しようと、 全力を尽くしたが……。 その前に立ちはだかった、 協会と、司教の圧力の前に、 あきらめざるを得なかったという。 王女とクレメンスは、 果たしてどこに消えたのか? ある人は、ノーストリリアの最深部で、 更なる知識を求め、 学問に打ち込んでいると噂し……。 またある者は、全ての知識を得た結果、 あえて生きる必要を見失い、 世捨て人となったとも噂する。 真実を知るものは、おそらくただ一つ。 ……協会のみである。