・ディトリッシュ エクレール:こんな高い場所に閉じ込められて一週間。  なにも代わり映えのしない毎日。 退屈ですわね〜。  ……あ、すみません。 私より、姫様の方がおつらいというのに。  一生、こんな塔で暮らすのでしょうかね。 いまは食事がくるからいいけれど……。  ……いやいやいやいや、 こんな塔の中でだって、 なんでもできますわよね。  伝記でも書きましょうか? 『フィーリア獄中の手記』って題名で。  シルヴェストル様あたりを通じて 売れば、ベストセラーになりますわよ!  ……あ、歌でも歌いましょうか? 元気の出る歌を知ってるんです。  その名も『元気だホイ』。  元気だホイ! 元気だホイ! 元気だホ〜イホイ!  ……すみません、黙ります。 ディトリッシュ:相変わらず、エクレール殿は陽気ですね。 エクレール:なにが陽気なものですか。  ……って、えええ!? その声はッ! ディトリッシュ:窓の外ですよ。 エクレール:……ディトリッシュ殿! あの、ここ、地上20階くらいって 聞いてますけど。  それにいま、鉄格子をどうやって すり抜けましたの? ディトリッシュ:私にも、それなりのことはできるのですよ。  ……お待たせしました、フィーリア。 私の愛しい人。 ファットノーズ:ディクトール国王陛下! 王女殿下の侍女、エクレール様が  お見えになっております! ディクトール:そうか、通せ……。  ……なに!? あの侍女は、一緒に牢へ 閉じ込めたはず……! エクレール:姫様は、行ってしまわれましたわ。 ディクトール:なんだと……? なにがあった! エクレール:ディトリッシュ殿に、 連れ去られてしまったのです。 ディクトール:……やはり、『闇の者』め! ええい、捜索隊を出せッ! エクレール:無理よ。風と同じ、もう捕まえることは  できない。私たちの手の届かぬところへ 行ってしまわれた。  そして、私も……。 ディクトール:なに?  ……消えた? どういうことだ。 いったい、なにが起きているんだ……。